ウズベキスタンの民族舞踊「ウズベクダンス」とは?中国の胡旋舞との関係も紹介

ウズベクダンスとは?

私たち日本人にとってはあまり耳慣れない「ウズベクダンス」は、中央アジアの国ウズベキスタンの伝統的なダンスです。ウズベキスタンはかつて中国から続いていたシルクロードの中心地として栄え、美しいイスラム建築と民族舞踊のウズベクダンスが特色です。

ウズベクダンスは現在も祭りや結婚式でも必ずといっていいほど踊られています。特にフェルガナ、ブハラ、ホレズムの3つの地方が有名で、なかでもフェルガナスタイルは最も抒情的でやわらかい手の動きが特徴です。

ウズベクダンスは簡単にいえば、ウズベキスタン文化を擬人化したような独特の表現するダンスなので、異国情緒のある珍しい民族舞踊でもあります。

ウズベクダンスの種類を大きく分けると古典舞踊と民族舞踊の2つがあります。古典舞踊は専門学校で本格的に学び、大きな舞台で披露される伝統的なスタイルです。一方で民族舞踊は、ウズベキスタンのほとんどの地域で踊られているので国民には馴染みがあるスタイルのようです。

観光シーズンになると毎日のように民族芸能のショーが開催されているほど、今や国のシンボルとして知られています。ウズベクダンスの踊り手は、指や眉毛に至るまで身体全体の動きをストーリーとして表現を求められており、技術的なステップと同様に高い表現力が必要です。

古典舞踊ではない限り、特別な訓練を受けているわけでもなく、踊り手の感情や表現だけで踊られているようです。ただし、ウズベキスタンの歴史を物語ることが原則なので、ただ単に踊り手の自己表現のために踊るわけでもありません。

ウズベクダンスのスタイル

ウズベクダンスには地方によって、異なるスタイルを持っており、それぞれの地域に専門の舞踊学校があるくらい特化しています。それぞれ簡単に説明していくと、まずウズベクダンスの発祥とされているフェルガナ地方では非常に情緒あふれるようなスタイルで、全体的にゆったりとしていますが、アクセントとなる回転が加わります。

また、ブハラ地方のスタイルでは強い感情で満たされたような堂々とした踊りが特徴で、歯切れの良い手首の動きや深く背中を反らすことがあります。そしてホレズム地方のスタイルでは火の神を崇拝を目的とした古代の伝統を受け継いでおり、頭の動きやシミーも独特でコミカルな要素が特徴で、よくパーティーでも披露されています。

他にもアンジジャン、スルハン、ダリア、カラカルパク、サマルカンドなど多くのスタイルも存在しています。

今回はフェルガナ、ブラナ、ホレズムの3つをもっと詳しく紹介していきます。

フェルガナスタイル

フェルガナスタイルはなめらかな手の動きと、遊び心にあふれたような頭の動きが特徴です。また、感情が外に流れるようなダンスなので、ホレズムやブハラのように厳格な動きとは異なり、即興的で自由度が高いスタイルです。

フェルガナスタイルでは手のひらを上に向ける習慣がありますが、他のスタイルでは手のひらはどの位置にあっても良いとされています。さらに、ホレズムスタイルでは動物の世界を模倣した表現を行うことに対して、フェルガナスタイルでは人間関係を描きながらロマンチックなテーマを追求することが多いようです。特に首や頭の動きが多く、ヘビのように手を使うこともあります。

やわらかい曲調に合わせて、軽く飛ぶようなステップと手のスイングでさまざまな雰囲気を作り上げています。音楽においては、ウズベキスタンの古典文学から引用された音楽や歌が使用されており、悲しみや愛する人との再会を願う深い気持ちが込められていると言われています。

ちなみにフェルガナスタイルの特徴的な手の動きは、ウズベキスタンの他にイランやアフガニスタンなど東洋の伝統的なダンスに見られるものと似ているようです。

ブハラスタイル

ブラハスタイルはホレズムスタイルと非常に似ており、エネルギーと情熱があふれたような雰囲気が特徴です。しかし、ブラハスタイルの伝統的で優雅な動きや回転とはまったく異なる側面を持ちます。また、上半身が前面に出ていることも特徴の1つです。

ブラハスタイルでは音楽の演奏するときに2つの楽器しか使用しない傾向があるようです。カイラキと呼ばれるカスタネットのような金属板と手首と足に着用するブレスレット状の鈴であるダンガの2つです。

ブラハスタイルで披露されるステップは、床にかかとを叩く音が響くほど攻撃的な動きなので、他のスタイルとはまた違う雰囲気です。手と身体で陽気でエネルギッシュな表現が求められるスタイルなので、見る側にとっては面白いかもしれません。

ホレズムスタイル

3つ目のホレズムスタイルの歴史は数百年前までさかのぼります。生命への愛、自然の美しさ、仕事への献身を表現するダンスです。また、動物や労働者の動きを真似した面白いジェスチャーを振り付けに反映されています。

ホレズムスタイルではブラハスタイルやフェルガナスタイルとは異なり、回転はあまり見られませんが、動きがシャープでポーズを決める動きが特徴です。明るい気質と熱意がある雰囲気を表現するので、ウズベキスタンの他の地域とはまた違うダンスです。

ウズベキスタンの有名なダンサーのタマラ・ハヌム氏によると「ホレズムの踊りには、フェルガナ特有の叙情的な歌詞、ブハラの古代の踊りにある高貴さ、同時に太陽エネルギーに満ち、鮮やかな情熱であふれている」と言ったようです。

ホレズムには面白い言い伝えがあります。古代のホレズム地方を治めていた王には一人の召使いがいましたが、ある日、その女性は指の骨を折ってしまいました。王は自分と客人のために踊るように命じましたが、彼女は王を愛していたため断ることができずに踊るは奇妙なものになったそうです。それ以来、ホレズムスタイルとして知られるようになったそうです。

中国の胡旋舞との関係は?

ウズベクダンスは中国の胡旋舞(こせんぶ)と呼ばれるダンスとは深い関係があります。

中国がまだ唐の時代の頃に、ウズベキスタンのサマルカンド地方に住むソグド人に伝わったようです。当時の唐では流行したダンスで、その影響は中央アジアにも広まったと言われています。

また、ウズベキスタンもシルクロードの中心地として栄えた歴史もあるため、流れに乗って伝わったのでしょう。つまり、ウズベクダンスは胡旋舞が由来のダンスで、どちらも高速で回転する特徴を持っており、多くの詩人たちも書き残しているほどです。

ウズベキスタンだけでなく、シルクロードが通る全域で胡旋舞が女性の踊りで誘惑の踊りであると同時に、シルク(絹)の製造法や刺しゅうの様子を表現した踊りも伝えられています。

ウズベクダンスと胡旋舞を比較してみよう!

ここまでウズベクダンスの特徴や胡旋舞との関係について紹介してきましたが、実際にどんなダンスなのか気になる方も多いでしょう。

それぞれ動画で紹介していきます。

ウズベクダンス

こちらは複数の女性たちがセンターのダンサーを囲んで踊るウズベクダンスです。

刺しゅうが施された絹の衣装をまとい、頭にはベールのような帽子をかぶっています。この衣装を見ただけでも異国情緒が伝わってきますね。

ウズベクダンスのゆったりとした曲調に合わせて、ダンサーたちが回転したり、なめらかな動きで移動しています。

世界中にあるような民族舞踊とはまた違う雰囲気で女性のためのダンスというのも納得ですね。

胡旋舞

こちらはウズベクダンスの元となった唐時代から伝えられている胡旋舞です。

だんだん東に寄っていくと日本舞踊と雰囲気が近いような感じがしますね。

華やかな衣装を着た女性たちが腕の布を使った動きが特徴的で、壮大な音楽とともに高速で何度も回転しながら踊っています。

いかにも中国の伝統的なダンスという印象がありますが、これがシルクロード全域で伝えられたと想像すると尊いですね。

まとめ

本記事ではウズベクダンスについて紹介しましたが、実は日本でもウズベクダンスを学べるスクールがあるようです。

しかしながら、かなり少数派の珍しいダンスなので、逆に知っている人はなかなかいないと思います。

ウズベキスタンについてあまり知らなかったという方もこの機会にウズベクダンスに触れてみましょう。

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